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第29話 告白 6-1
指先で箱をつまみながら藤堂は僕を見下ろし目を細めた。その目には明らかに呆れの色が含まれている。
「食堂へ行くのが面倒と言うのはまだいいとしても、購買に行くならもっとましなもの食べませんか」
「ああ、パンとかおにぎりとかってこう、片手に持ってもなんかボロボロと」
「ながら作業で食事しないでください」
言い訳はバッサリと遮られた。なかなか手強い。でもまさかこんなことを問い詰められることになるなんて、思いも寄らなかった。
「意外と先生って食に興味ないタイプですよね。朝晩もこんな感じなんでしょうね」
「う、否定はしないが、毎日昼がこれってわけじゃないぞ」
朝はまず食べない。夜も食べたり食べなかったり。腹が減ったら食べる。空かなきゃ食べない。それが普段の食生活だ。基本的に感覚任せで規則正しい食生活からはほど遠い。でもそれでいままで困ったことは一度もない。
「お節介することにしました」
「……?」
手にした箱を元の場所へ戻し、藤堂は急に真剣な表情を浮かべる。
じっと見つめてくる藤堂。その表情も言葉の意味もわからず首を傾げると、ふっとため息をつかれる。
「これから毎日、先生にお昼用意してきます」
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