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第31話 告白 6-3
「俺みたいなのが相手で面倒くさいって思ってますか?」
「いや……違、う」
藤堂の目が不安そうに揺れ、思わず首を左右に大きく振ってしまった。――弱い。この顔に弱過ぎるぞ自分。
「そうじゃなくて……ああ、うーん」
それに藤堂の顔はどんなアップにも耐えられる気がするが、こっちは見慣れない綺麗なものが間近に迫って、心臓はすでにもう耐えきれずに限界だ。しかし顔を背けるわけにもいかず、視線をわずかにそらしているのだが、目の前で話をされるたび動く口元が目に入ってさらに墓穴を掘った気分になった。
「と、藤堂? あのな……ち、近い」
そう申告し、耐えきれず藤堂の肩を押した。けれどなぜか逆にその手を取られ、さり気なく指先に口づけられてしまう。あまりにもさり気なさ過ぎて、一瞬なにが起きたかわからなかった。けれど僕は反射的に飛び上がるようにその手を上げてしまった。
「な、なんだ!」
めまいがした気もするが気のせいだと思いたい。心臓の音が胸じゃなくて耳の横で鳴っているのかと思うほどうるさい。
「逃げられると追いかけたくなるっていう心理はよくわからなかったんですけど……いま、わかったような気がします」
「そんなものはずっとわからなくていい!」
微笑む藤堂に思わず突っ込んでしまった。
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