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第37話 接近 1-2

「ああ、どうしよう」  心の声が思わず口からついて出る。 「なにがどうしようなんですか?」 「え?」  ふいに頭上から降る声に気がつけば、目の前に僕を影で覆う人が立っていた。そして慌ててそれを見上げ僕は目を丸くする。 「あれ、藤堂?」 「早いですね。いつからここにいたんですか」  見上げた先では、藤堂が首を傾げて少し困ったような表情を浮かべている。そんな藤堂の姿にこちらも思わず首を傾げてしまった。 「お前こそ早いな。まだ三十分前だぞ」 「俺は朝弱いんで、早めに行動しないと厳しいんです」  そう言って少し恥ずかしそうに照れ笑いをする藤堂を思わず凝視してしまう。   「藤堂、お前朝弱いのか? 意外だ。なんかこう朝からしゃきしゃき動いてるイメージだった」  隙のなさそうな普段の様子からはあまり想像がつかない。意外過ぎる藤堂の一面に驚いていると、藤堂は乾いた笑い声を上げる。 「俺は先生が思ってるほど完璧じゃないですよ。毎朝あずみと弥彦が起こしに来るんで、平日は寝坊しないですけど」 「ふ、ふぅん。そうかお前たちは家が近いんだったな」

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