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第41話 接近 1-6

「すみません。あ、もしかして耳って弱いですか?」  耳を押さえ恨めしげに見上げれば、藤堂はほんの少し眉尻を下げ笑う。でもいまだに彼の手は僕の頭を撫でている。 「いい、もういい。とりあえず行こう」  心臓の鼓動が速くて全然よくはないが、ふと視線に気がつき僕は慌てて立ち上がった。思えばここは駅前。休日の午前中とはいえ待ち合わせの人々が多くいるこの場所で、僕らは大いに悪目立ちをしていた。恥ずかしいことこの上ない。  それでなくとも藤堂は黙っていても目立つのに、男同士でこんなことしていたら余計に人目につく。 「まだ時間は早いからどこかで飯にでもするか」 「そうですね」  急に立ち上がった僕に目を丸くしていた藤堂は、軽く何度か瞬きをしてからふわりと微笑んだ。

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