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第42話 接近 2-1

 しばらく駅前をふらりと歩き、結局手近のカフェに入ることにした。  店内はそれほど混みあってもなくほっとする。正直騒がしい場所はあまり好きではない。店の奥へ案内され、水とメニューを置いて去っていった店員の背中を見送っていると、藤堂はなぜか僕の目の前に置かれたそのメニューを指先で軽く叩いた。   「な、なんだ?」  その仕草の意味がわからず首を傾げれば、藤堂は少し目を細めてこちらをじっと見る。 「いま、とりあえず珈琲でって思ったでしょう?」  いささか呆れた口調の藤堂がそう言った瞬間、口に含んだ水があらぬ場所に入り僕は盛大にむせた。 「大丈夫ですか?」 「だ、だいじょ、ぶ、だ」  焦ったように立ち上がりかけた藤堂を制して、咳き込みながら何度も頷いて見せると、藤堂は眉を寄せながら渋々といった様子で座り直した。 「その様子だと図星ですね」 「う、まだあまり腹が減ってないんだよな」 「朝は食べました?」 「いや、朝は食べない」  藤堂の視線に目をさ迷わせると、ふいにテーブルに置いていた手の上に藤堂の手が重なる。反射的にその手を引こうと力を込めたが、それを押さえ込むようにぎゅっと握られた。

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