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第44話 接近 2-3

「怒ってます?」 「怒ってない。ただ藤堂のは色々と直球過ぎて、年寄りにはちょっとハードルが高過ぎる」  藤堂はなにもかもが変化球もなくストレート過ぎる。確かに下手にあれこれ根回しされても、それはそれで困るのだが。それでもそういう工作をされれば、ちょっとはかわす余裕が生まれそうなものだ。  けれど彼はその隙さえ与えないくらい――直球だ。そしてそれに対しての免疫が残念ながら僕にはない。そう、これまでの人生の中でここまでまっすぐ熱烈に、誰かに好かれたことが一度もない。 「迷惑ってことですか?」  頭を抱えたまま顔を落とした僕に藤堂の気配が強張るのを感じた。こちらの様子を窺うような声に慌てて僕は顔を上げる。 「そうじゃなくて、その、なんて言うか……いや、わかる。自分も若い頃はそうだったと思うし、うん、勢いがあったと言うか。ああ、そういう話じゃなくて」  言いたいことがまとまらず勢い任せに髪を両手でかき乱すと、藤堂が微かに息を吐いた。 「頭ではわかってはいるんです。でも、一分でも一秒でも長く傍にいたいですし、俺のこと知って欲しい」  徐々に小さくなっていく藤堂の声になぜか罪悪感を覚える。けれど叱られた子供みたいなその表情が、ほんの少し情けなくて可愛いと思ってしまった。  だけど――。

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