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第46話 接近 2-5
頬杖をつきながら微笑んでいる藤堂を訝しげな目で見ると、それに反して彼はますます頬を緩めて幸せそうに笑う。料理を注文し、それが運ばれてくるそのあいだずっと、藤堂は僕をじっと見つめていた。そしていざ食事を始めると、時折ふっと手を止めて藤堂はまた僕を見つめる。
「可愛いな、と思って」
そしてあ然とする僕などお構いなしに、藤堂は笑みを深くする。
「そう思うのはお前くらいだ」
お前の目は節穴かと、突っ込んでやりたいのは山々だけれど、また嬉々としてなにを言われるかわかったものではない。これからは気をつけますと言っていた割に、藤堂は相変わらず直球で、まったく気をつけてくれている気配はない。というよりもこれは気をつけようがないのではないか?
おそらくこの藤堂の一挙一動はわざとではないのだと思う。きっとただ素直に感想を口にし、行動をしているのだろう。でもふとした疑問も浮かぶ。
「いや、計算なのか?」
「なにがですか?」
小さな僕の独り言に藤堂が不思議そうに首を傾げる。その表情から真意は読み取れない。
「いや、なんでもない」
藤堂は頭がいい。もしかしたらうまい具合に翻弄されているだけなのかもしれない。けれどそれもまたどこか寂しくも思えた。
「本当に?」
「あ、ああ」
我ながら直球で来られ過ぎても困る、計算だったら寂しいなど我がままにもほどがある。
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