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第48話 接近 3-1
食事が進むとさすがに藤堂もいつまでも僕を見てばかりではなくなった。ほっと息を吐いてのんびりとスープを啜る。ようやく味がしっかりわかり始めた気がした。
「そういえば。藤堂、今日バイトは?」
昼時になり混み始めた店内を見てふと思い出す。飲食店でバイトしているのならば、休日はなにかと忙しいのではないだろうか。けれど藤堂は僕の気持ちを読み取ったかのように優しく微笑んだ。
「ああ、休みです。日曜日はほとんど休みですね」
「日曜日はって、週にどのくらい出てるんだ」
なに気なく問いかけた僕のその言葉に首を傾げた藤堂は、一瞬ぴたりと止まり瞬きをする。
「週五日か六日くらい? そういえばあまり気にしてなかった。日曜日以外は休みは決まっていないので」
「お前の朝の弱さは働き過ぎじゃないか。サラリーマンじゃあるまいし」
学校へ行ってバイトも週五日はいくらなんでも働き過ぎだ。呆れた顔で藤堂を見れば苦笑いを浮かべていた。
「人の心配の前に自分の心配しろよ。学生で過労って笑えないからな」
「先生がそう言うなら気をつけます」
眉を寄せた僕に藤堂は小さく笑って肩をすくめる。しかしどこかはぐらかすようなその仕草は、藤堂が持つもう一つの顔を隠す。
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