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第50話 接近 3-3

 ここまで気遣いができて、顔もよくて性格は――ちょっと意地が悪いところもあるが、おおむねよくて、そんないい男がなんで自分なのかと、今更ながらに少し残念に思えてきた。本当に、こんなになんの取り柄もない僕なんかのどこがいいのだろうか。 「なんですか? 人の顔を見てそんな可哀想なものでも見るような目は」 「……なんでもない」 「どう見ても、なんでもない顔じゃないですけどね」  眉を寄せた藤堂に僕は小さく息を吐いた。僕が考えても答えは見つからない気がしたので、それ以上考えるのはやめることにした。 「そろそろ行くか」  いまだ納得のいかない表情を浮かべる藤堂を尻目に僕はのんびりと席を立った。  そして会計時に財布を出した藤堂を無理やり下がらせ、それを開かせなかったのはなけなしの大人の意地。正直、男としては小さいけれど。でもやはり自分のほうが歳上だし、社会人と学生という立場から考えたら、こちらが支払うのは当然な気がして譲れなかった。 「ご馳走様です」  でも逆にすぐに引いて僕を立てた藤堂のほうが、スマートで大人だと思ってしまった。 「だいぶいい時間だな」  なんだかんだと長居をしたカフェを出て、時計を見れば十二時になるところだ。通りは人も増えて少し賑やかになってきた。

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