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第53話 接近 4-1

 通りを抜けきり目的の場所へたどり着くと、僕は上がった息を整えるように両膝に手をつき俯いた。その目の前では藤堂がしれっとした顔で立っている。  こんなところで歳の差を大いに感じて、自分の体力のなさを恨めしく思ってしまった。いや、日頃の運動不足も大いにあるのかもしれないけれども、それでもちょっと走っただけでこんなにも息が上がるとは情けない。 「大丈夫ですか?」 「……全然、大丈夫じゃない」  心配そうな藤堂の声に思わず棘のある言い方をしてしまう。そしてそんな僕の様子に藤堂の気配が変わる。情けないくらいにしょげた様子を見せる藤堂の姿に、僕は大きくため息を吐いた。――だから、弱いんだってその顔。 「怒ってますよね?」  僕のため息の意味を、別の方向で捉えてしまったらしい藤堂は、ますます困ったように眉尻を下げる。 「……怒ってない。もういい」  実際、数秒前まで怒ってはいたが、もうほんとにどうでもよくなってきた。なんだかんだと僕は藤堂に甘いようだ。というより、つい甘やかしたくなる。 「なんでだ?」  そして思わず自分で自分に聞いてしまう。

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