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第54話 接近 4-2

 なんでこうも僕は藤堂に弱いんだろうかと、不思議でならない。確かに藤堂はすごくいいやつで、まっすぐで素直だし、優しいし、ずっと傍にいてもちっとも不快にはならない。最近はなぜかもやもやすることも多かったけど、やはり嫌じゃないし――とそこまで考えて、なにか違う方向に考えが行ってしまっていることに気づく。  結局、考えても僕が藤堂に弱い理由が思いつかなかった。 「先生?」  急に考え込み始めた僕を見て藤堂が心配げに眉を寄せるが、僕はなにも答えずにじっとその顔を見つめた。不可解な感情がまた一つ増える。 「なんでもない」 「そう、ですか」  戸惑いがちに見る藤堂の目はまだ僕の機嫌を窺っているようだ。そしてそれがやはり可愛いと思う。思わず口元が緩んだ。 「……?」  突然にやけた僕を、藤堂はまるで自分の目を疑うかのように何度も瞬きをして見ていた。 「行くぞ」  珍しく固まってしまった藤堂にそう言って、僕は近くの入り口へ足を進める。そして開いた自動ドアをくぐり抜け、後ろを振り返ると、藤堂はやっと我に返ったのか僕の元へ駆け寄ってきた。 「すみません」  謝る藤堂を一瞥して僕は上階へ行くエレベーターを呼んだ。 「有名な人なんですね」  エレベーターの中でふいに藤堂が小さく呟く。背後に立っていた藤堂を振り返れば、壁に貼られた写真展のポスターを見つめていた。

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