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第55話 接近 4-3

 大きなポスターには、今回の写真展を主催するたくさんの会社と雑誌社の名前が記載されている。そこには簡単な経歴も載っていてそれはそうそうたるものだ。 「ああ、そうなんだよ。結構大きな賞とか獲ってたりしてて、色んなところからオファーが来るらしい。最近は風景だけじゃなくて人物も撮るようになったみたいだけど、まだそれは見たことないなぁ」 「へぇ」  曖昧な相槌を打つ藤堂を横目に僕もポスターを見上げ、その画を見る。  数枚の写真が綺麗にレイアウトされたそのポスターからも、独特な世界観が垣間見えた。なに気ない日常のはずなのにそれを切り抜く視点に感動を覚え、その美しさは何度見ても心が震える。目に見るより色鮮やかで、世界はこんなにも美しいのかとため息が出てしまうのだ。 「でも、本人はかなり変わってるけど」 「先生の、どういった知り合いなんですか」  あの人のことを思い出し思わず笑っていると、藤堂がなぜか眉を寄せて振り向く。 「え? ああ、知り合いと言うか。元は友達の知り合い? 好きだって言ったら紹介してくれたんだ。うーん、いまは友達かな?」  少し不機嫌そうな藤堂の表情に戸惑いながらそう答えると、ますます眉間のしわが深くなる。なぜこんなに突然、機嫌が悪くなったのかその理由がよくわからない。 「そんなに好きですか」 「あ、え? うん、まあ好きだよ」 「……そうですか」  問い詰められるような勢いに目を瞬かせ、小さく頷くとふっと目が細められる。どこか冷たい視線に胸の辺りがざわりとした。

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