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第58話 接近 4-6

「元気そうでなにより、佐樹ちゃんが俺のこと忘れてなくてよかったぁ」  両手で僕の頬を挟みながら、渉さんは満面の笑みを浮かべる。相変わらずスキンシップが激しい人だが、これはもはや身に染み付いた習慣なのだろう。彼のこの反応には、さすがに僕も付き合いが長いのでもう慣れた。 「渉さんも元気そうでよかったよ」 「俺はねぇ、今日打ち合わせに呼ばれてきたんだけど。面倒くさがらず来てラッキーだった」  にんまりと口角を上げて笑うと、渉さんは僕の頬に口づける。これもいつもの挨拶のようなものだ。  そんな彼の後ろにはスーツ姿の男の人が数人立っていた。年齢は様々なようだが、突然僕に抱きついた渉さんの行動に、ほんの一瞬だけ驚いた表情を浮かべはしたが、彼らは月島渉という人物を心得ているのだろう。いまは何事もなかったような涼しい顔をしている。  出会い頭にハグ、キスは彼の中ではごく自然なことらしい。 「あれ?」  彼のスキンシップを受け止めていると、急に渉さんは目を瞬かせて首を捻った。

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