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第66話 接近 6-2

 要するに自分はもう最初っから引っかかってたってことだよな。色んな出来事を畳みかけられて、流されてたってことなのか?  思わず低く唸ってしまう。でも多分きっとそうなんだろう。それは先ほど見せた藤堂の動揺で明らかで、最初っから藤堂はそのつもりだったわけだ。 「それに気づいたからって、今更どうすればいいんだ」  藤堂と距離を置いて、冷静に落ち着いて考えたら本当の気持ちってものがわかったりするのか?  ただ勢いに流されてるだけじゃない?  優しさにほだされてるだけじゃない? 「わかるか!」  自問自答していた僕は、思わず自分自身に突っ込みを入れてしまった。  大体いま現在だって藤堂に対してよくわからないのに、本当もなにもない。加えて渉さんのことなども考えるなんて到底無理だ。これ以上考えたら頭が悪くなりそうだ。 「藤堂」  離れた場所でこちらを窺っている藤堂を呼ぶ。 「……」 「藤堂、ちょっと」  こちらへ来るかどうかを躊躇っている彼の名をもう一度呼んだ。するとゆっくりと立ち上がり、藤堂は僕の目の前で立ち止まった。 「先生?」  戸惑う藤堂をよそに、僕は目の前の両手を掴み引き寄せた。そしてそれにつられるように一歩足を踏み出した藤堂と僕の距離が縮まる。

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