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第78話 接近 8-2
ふいにまた藤堂のことを思い出し肩が落ちる。あんな悲しい顔なんてさせたくなかった。
「ふはは、落ち込んでますねぇ。なんか懐かしいな、こういう話しするってさ。学生の頃とかを思い出すなぁ」
うな垂れた僕を茶化すように、明良は頬杖をつき目を細めて笑った。その声に顔を上げて睨みつけると、肩をすくめて乾いた笑い声を上げる。
「喧嘩したんだ?」
「ん、いや。喧嘩と言うか」
喧嘩、ではないと思うのだが、意思の疎通ができてないと言うか、どこかで食い違ってしまっていると言うか、原因がわからない。
いや、原因はあった。多分きっと僕のあの質問だ。
「どういう時に人って誰かを好きだって思うんだろう」
「ああ、それは非常に難しい質問だな。って、お前はほんとに……化石か」
頭を抱えてがっくりと顔を落とした明良に首を傾げると、盛大なため息が聞こえてくる。化石か、枯れてるよりも当てはまるような気がしてきた。なんだか大事なものをどこかに置き忘れて、そこから時が止まっている。
「そんな頭で考えることじゃねぇだろ。好きだって思ったら、もう好きなんだよ。一目惚れでも長い時間かけて好きになっても、それは佐樹の彼氏も渉も気持ちは一緒だろ」
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