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第79話 接近 8-3
「でもなんか違うんだよな」
渉さんが僕を好きでいてくれる気持ちと、藤堂が僕を好きだと言ってくれる気持ちは同じようでなにかが違うような気がする。
「なにが違うんだよ」
小さく唸り、首を捻る僕に明良もまた首を傾げる。
「同じ好きでもやっぱり違うもんか?」
「同じねぇ」
何杯目かわからないジョッキをテーブルに戻し、明良は再び頬杖をついて僕を見た。珍しく難しい顔をしている明良を訝しげに見れば、なぜかため息をつかれる。
「なんとなく話が見えてきたけど、ぶっちゃけ佐樹はどうしたいわけ?」
「は? どうもこうもない。わかんないから悩んでるんだろうが!」
呆れた表情を浮かべる明良に思わず声が大きくなってしまう。しかし明良は片耳に人差し指を突っ込み、眉をひそめるだけだった。
「俺から見たら、いや……わかってないのに言っても無駄か」
「なんだよそれは」
言いかけて止める明良をジトリと見れば、肩をすくめられる。さっきから明良の言っていることが全然わからない。
「一回、渉とデートでもしてみる?」
「なんで渉さんと」
突然そんなことを言われて驚いている僕に、明良は楽しげに肩をすくめる。
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