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第85話 接近 9-4

 藤堂に告白されたのは新学期の始まりで、それからまだ二週間も経っていない。それなのにもっと長く一緒にいるような気持ちになる。 「一緒にいて疲れないんだよな」  いつも気を遣う前に気を回されているのだから、本当に適わない。それになんとなく隣にいるだけで安心する。 「顔を見ないのは」  ――落ち着かない、そう呟きそうになって思わず顔が火照った。 「そこまで重症か」  少し距離を置いてみればいい、そう言われたばかりなのに。すでに物足りなさを感じているのはどういうことなのだろう。短絡的な自分の脳みそに呆れてしまった。  忘れていた頭の痛みがぶり返す。 「今日はもう帰りたい」  痛む頭を押さえれば自然とため息が漏れた。 「とりあえず、あとで片平か三島にでも聞いてみるか」  悩みに悩んだ末、携帯電話を握り締めたまま肩を落とし、僕は準備室をあとにした。 「おはようございまーす」 「おはよう」  旧校舎の二階にある準備室から、本校舎一階の職員室へ向かうためには、それを繋ぐ渡り廊下を通らなくてはならない。その渡り廊下の端は本校舎の中二階の踊り場へ繋がる。そして大概ここを歩いていると、慌ただしく駆け込んでくる生徒たちが通り過ぎながら挨拶をしてくる。

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