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第89話 すれ違い 1-3

「そこをなんとか! 藤堂がやってくれると女子の志気が上がるんだ」  三人組の一人。真ん中で一際小さい、黄色い頭の神楽坂が拳を握りしめ力説する。けれどこちらにして見れば、まったく興味がない話だ。 「断る。放課後は時間がない」 「大丈夫! 放課後に会議はやらないって」  大丈夫の意味がわからない。放課後にやらなくていつやると言うのか。ため息交じりに目を細めたら、神楽坂は本気で土下座した。 「マジで頼む! じゃないと会長に殺される」 「は?」  頭を下げて合わせた手だけをその上に掲げながら、神楽坂は半泣きで震え出した。 「さっきと話が違うみたいだけど?」  神楽坂の言葉にあからさまに不快な表情を浮かべれば、彼は飛び上がりそのまま床に正座した。 「女子のやる気度が上がるのはほんと、ほんと。藤堂がちょっと頑張れって言ってくれれば百人力さ」  慌ただしく両手を上げて、身振り手振りする様はまるでコマ送りの盆踊りのようで、その両脇で首を縦に何度も振るそれは、さながらネジを巻き過ぎて壊れたおもちゃのようだ。 「でも、会長に殺されるのもほんとなんだよ! 級友を救うと思って、この通り」  両腕を伸ばし、床にひれ伏した神楽坂に思わずため息が漏れる。

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