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第90話 すれ違い 1-4
「もしかして神楽坂って今回、創立祭の実行委員長?」
神楽坂の言う創立祭とはこの学校の七十周年の特別行事。とはいえ、文化祭のような賑やかな催しではなく少々格式張った父兄向けだ。
「イエス! そうなんだよ。面倒くさい役回りなんだよ」
身体を勢いよく持ち上げ、神楽坂はがっくりと肩を落とす。
こういった単発のイベントごとは生徒会が主催し、各学年、各クラスから自薦他薦で実行委員が選出される。そして実行委員長はその中から学年問わず、比較的ランダムに選出されるので、実行委員の中でも委員長に選ばれる確率はきわめて低い。
よほど神楽坂は運がないらしい。
「うちのクラスは仲は悪くないのに統一感がなくてさぁ。俺が委員長だから、このクラスからはあと一人でいいのに、全然決まらないんだよ役員」
教室を見回せば他人事のように頑張れよ、という声がかかり、我は関せずと言う雰囲気。別な意味ではよすぎるくらいの統一感だ。
「みんなマイペースだからな」
ほとんどが二年からの繰り上がりで、見知った顔が多いが、体育祭だとか文化祭だとか。意気揚々とした姿は見たことがない。
「そろそろ俺、ほんとに殺されちゃうかも。だから名前だけでも貸して、あとは俺が頑張る」
「別に俺じゃなくてもいいんじゃないか? 両隣の二人とか。お前たち仲がいいんだろ」
「と、藤堂じゃなきゃ駄目なんだ!」
粘る神楽坂に渋れば終いに泣きつかれる。けれどやけに食い下がるその様子に、思わず目を細めてその姿を見下ろしてしまう。
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