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第91話 すれ違い 1-5

「それって指定あり、ってことか」  俺の言葉にびくりとした神楽坂の様子に、いままで黙っていた弥彦がふいにため息をついた。 「だから言ったのに、優哉に誤魔化し利かないって」 「三島! お前からもなんか言ってくれ」 「嫌だ」  弥彦の膝にすがりつく姿は情けないを通り越して哀れだ。犬猫でも払うように手を振られ、ついに神楽坂は床に倒れた。 「これじゃあ、まったく埒があかないな。どういうことなんだ」  机に頬杖ついて神楽坂を見下ろせば、もごもごと言いにくそうに話し出す。 「いや、それが……うちのクラスの実行委員がなかなか決まらないって言ったら、藤堂にしろって、会長命令が下って」 「そういうことか」  いまの生徒会長である峰岸一真と俺は、一時期だが友人に近い関係であったのは確かだ。それにしてもあいつの自由奔放な考え方は相変わらずだなと、思わずため息が漏れた。なにかあいつの中で面白いことでも見つけたのだろう。 「神楽坂はほかに選択の余地はないのか」 「うーん、これが残念ながら」  本気で肩を落として俯く神楽坂の様子に、ほんとにこのままでは平行線だと思った。面倒だが仕方がない。 「わかったよ」  仕方なしにそう呟けば、神楽坂は泣きながら飛び上がり俺の手を掴んで振り回した。 「じゃあ、これにサラサラーっと名前書いて」  放課後は時間を割かないと念を押し、安堵した笑みで差し出された役員届け出書にサインをする。創立祭まで五月の連休を挟みあと一ヶ月。  とてつもなく面倒くさいのに捕まった。

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