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第96話 すれ違い 2-5

 けれど戸惑いと共に急に頬が熱くなる。確かに一瞬、藤堂は自分のこういう面倒くさがりで大雑把な部分を、あまり気にせず許容してくれるな、と思ったりした。  思ったりはした、けど。 「ごめん、知ってる。実はこの前あっちゃんから聞いちゃった。優哉が、西やんに好きって言ったこと」  あたふたと周りを見回して挙動不審になった僕に、眉尻を下げて三島は小さな笑みを浮かべた。 「えっ? そ、そうなのか」  この間の、名刺をもらった日だろうか。確かに僕と片平の会話は三島にとって謎だったろうし、疑問に思うよな。 「うん。でも、高校入った頃からちょっと優哉は変わったし、そういうことかって納得しちゃった」 「変わった?」  藤堂がどう変わったのか予想もつかず首を捻る。すると三島は少し遠くを見ながら首を傾げた。 「前より笑うし、喋るし、物事に興味を持つようになったよ」 「ん?」  三島の言葉からは、どうにも僕の中にある藤堂のイメージと違い過ぎて、その姿が想像がつかない。 「藤堂はよく笑うし、よく喋るぞ。物事の関心まではわからないけど、愛想もいいしなにかと優しい」  自分で言っていて少し気恥ずかしさはあるが、やはり僕の中での藤堂は、すごく優しくて気遣いもできて、よく笑いよく話をしてくれる。 「え? 西やんの前だとそうなんだ」  僕の言葉に一瞬だけ目を丸くしてから、三島はへらりと笑い頬を緩める。 「よかった」  そう呟いた三島の顔は本当に嬉しそうだった。そして、かくいう自分もなんだかむず痒くて、顔が熱くなった。

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