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第99話 すれ違い 3-3

 あれから連絡もしないままで、なんと言って話しかけたらいいのかわからなかったのだ。だからもう少し落ち着いて、気持ちの整理ができてからちゃんと話をしたいと思っていた。それなのに唯一、ゆっくりと話ができる昼休みに借り出されるなんて、まったくもって予定外だ。  思わず深いため息が出る。 「どうした? 昼間っから、そんなでかいため息ついて」 「……」  ふいに目の前にお茶のペットボトルをぶら下げられた。それに気づき振り向けば、にやりと口の端を持ち上げる男が立っていた。それはため息の原因を作り出した張本人、生徒会長の峰岸だ。  俺の反応を待っているのか、峰岸は顔にかかる薄茶色の長い前髪をかき上げながら、じっとこちらを見下ろしている。 「受け取れよ」  いまだ目先で揺れるペットボトルの存在を無視していれば、その底を額にぶつけられる。渋々それを受け取ると、峰岸はガチャガチャと耳に障る音を立てながら折り畳みの椅子を引きずり、俺と向かい合うように座った。  周りでさわさわと気配が揺れる。 「なにを見てんだ? 西岡センセ?」  俺の眺めていた方角へ視線を向け、峰岸は楽しげに目を細める。その表情に小さく舌打ちをして、俺は目の前で笑う男の爪先を蹴り飛ばした。 「お前は相変わらず気が短いな。あの人の前じゃ別人みたいに惚ける様な顔して笑ってるくせに」  蹴り飛ばされてもさして気にした様子は見せず、足を組みながら峰岸は口の端を緩める。その表情に今度は椅子の脚を蹴り飛ばした。軽く浮いた椅子がガシャンと床の上で音を立てる。

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