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第100話 すれ違い 3-4
その音に室内にいる者たちは何事かと皆、ぎょっとした顔で振り返った。
「俺はこっちのほうが好きだけどな」
「頭がおかしいんじゃないか」
ニヤニヤとする峰岸に目を細めれば、また周りがさわさわとする。いや、おかしいのはこの場にいる女子の反応か、俺たちのやり取りを遠くから眺めながら、どうしようもないほど楽しげだ。なにが面白いのかさっぱりわからない。
「わかってないな。藤堂はツンデレじゃなくて、どっちかって言うと鬼ち……」
女子の会話にほくそ笑む峰岸の額に目がけ、俺は逆さに持ったペットボトルを振り落とした。プラスチックがへこむ鈍い音と峰岸の笑い声が重なる。
「意味のわからない単語を喋るな」
「ほんとのことだろ。俺はいままでお前がキレてる姿は見ても、デレる姿は見たことねぇぞ。まあ、いまはあの人にデレデレだけどな」
「うるさい、お前相手にどうしろって言うんだ」
苛立ちを含んで視線を向ければ、峰岸は肩を震わせながら笑いを堪えていた。こうやって人をからかい楽しむのがこの男の悪い癖だ。
「そんなに怒るなよ。よくこんなんでセンセといてボロが出ないもんだな。まあ、あんまり変わってなくて安心したけど、ってどこに行くんだ」
急に立ち上がった俺の腕を峰岸がとっさに掴む。
「戻る」
掴まれた腕を振り払い眉を寄せれば、峰岸も視線を合わせるように立ち上がった。
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