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第101話 すれ違い 3-5
「まだ終わってないぜ」
「なにがしたいんだ」
生徒会が今回主軸になっているとは言えど、神楽坂を半ば脅して俺を実行委員にさせる意味がわからない。少なくともこの男は、俺の放課後が空いていないことを知っているはずだ。
首を傾け至極楽しそうに笑う峰岸の顔を見ていると、思わず大きなため息が出てしまう。元々気まぐれな男だが、その言動は相変わらず読めない。
「いや、なにがしたいというより、お前があまりにも本気だから、多分ちょっとした未練だろうな」
「は?」
よくわからないその返答に、俺の顔は無意識のうちに険しくなった。
「お前に未練残される覚えはない」
「まあな」
軽い返事をして笑う峰岸。しかしふいに腕を持ち上げた峰岸の手が俺の顔を掴み、頬を撫でた。口元を緩める峰岸に目を細めれば、周りで小さな悲鳴が上がった。
「顔、素に戻ってる」
「元々こういう顔だ」
「嘘つけ。いつもこんな怖い顔はしてないだろ」
いまだ顔を触る峰岸の手を払い落とせば、また愉快そうにくつくつと笑う。その表情に思わずこめかみが震える。おもむろに峰岸の腕を掴み引きずると、俺は勢いよく窓を開け放った。
「お前、一回ここから落ちろ」
「そんな恐ろしい顔で見るなよ。お前ほんとにやりそうだからな」
俺の顔を見ながら肩をすくめ、峰岸は転落防止の桟に背を預け窓の縁に腰かけた。
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