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第105話 すれ違い 4-4

 いや、満足していなかったんだ。だからこそ、いまこうして少しでも近づけたことに、自分は浮かれてしまっているんだ。 「まあ、いい人なのはわかるけどなぁ。でもそこまでそそられるようなタイプじゃないし、どの辺がいいんだ?」  耳打ちするように顔を寄せて話す峰岸の顔を押しのけ、不快な表情を浮かべると、それに反して後ろから覆い被さるように抱きつかれた。  室内に黄色い悲鳴が響き渡る。 「遊んでないで仕事しろ」 「たまには俺と遊ぼうぜ」  明らかに周りの反応を楽しんでいる様子の峰岸にため息が出る。自分が楽しむ為に他人を巻き込むのも峰岸の悪い癖だ。誰を巻き込もうが構わないが、こちらに火の粉がかかる真似はやめて欲しい。 「やっぱり少し性格が円くなったな。前なら今頃、俺は床に沈んでたぞ」 「そんなに沈めて欲しければ沈めてやるぞ。海にでも」  面白くなさそうな表情を浮かべる峰岸を一瞥して、再びため息をつくと苛々していた感情が冷めていく。 「もう冷めたのか」 「お前が喜ぶことをしてやるのは馬鹿らしい」  不服そうに呟く峰岸に肩をすくめれば、なにやら思案するように小さく唸る。 「……そうか、じゃあセンセで遊ぶとするか」  そう言って笑うと、峰岸は俺の首に巻きつけた腕に軽く力を込めて、無遠慮に人の横顔に口づけた。

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