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第107話 すれ違い 5-2

「三島はなんとも思わないのか?」 「なにが?」 「だから、その」  口ごもる僕にますます三島は首を捻る。けれどやっと通じたのか、あっと小さな声を上げてから僕の顔をじっと見つめた。 「西やんならいいよ。いままで色んな女の子とか男の人とか一緒にいたことあったけど。優哉はいまが一番幸せそうだから」 「え?」  満面の笑みを浮かべる三島を見ながら僕は、藤堂がいま幸せそうだということより――女の子と付き合ったことがあると言う事実と、三島に色んな人と言われるほど、いままで付き合った相手がたくさんいるのだという事実に、軽くめまいがした。  なぜか滲み出す額の汗に戸惑いながら、はやる自分の気持ちに焦る。 「……」  一気に込み上がってきたその感情に、思わず僕は頭を押さえてうな垂れた。これはいくら毎回鈍いと言われる自分でもはっきりとわかった。  いまものすごく自分はショックを受けているのだ。 「あれ、もしかして俺、いま余計なこと言っちゃった?」  突然動きが止まった僕を見て、三島が焦ったように顔の前で手を振る。  聞こえる声が微妙に遠い。 「だ、大丈夫だよ。いまは優哉、西やん一筋だし。これまでじゃありえないくらい本気みたいだし、ね。大丈夫だって」  肩を掴まれ強く揺さぶられると、ようやく僕は我に返った。

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