110 / 1096

第110話 すれ違い 5-5

「西やん嬉しそうだね」 「そ、そうか?」  こちらを見ながらニコニコと笑っている三島に、僕は思わず乾いた笑い声を上げてしまった。でも頬が緩むのはなぜだろう。 「少し心配してたんだけど、そんな心配はいらなかったな」 「心配?」  安堵したように息をついた三島の呟きに、僕は思わず首を傾げた。そんな反応に三島は小さく笑ってテーブルに頬杖をつく。 「避けないでちゃんと優哉のこと好きになってくれたみたいだし」 「そ、それは」  三島の言葉に思わず口ごもってしまう。好きだと思える感情がわからないと、昨日の晩に自分で言ったばかりだ。  しかし――会えないのは寂しい。でも会えると思えば嬉しい。 「いや、でもまだほんとに好きかどうかは、わからないんだ」 「そんなに急ぐことじゃないよ」  頭を押さえて唸る僕に三島は声を上げて笑う。その笑みに僕は曖昧に微笑むしかできなかった。  まだ心はどれが答えなのかわかっていない。ただ、気持ちが整理はまったくできていないのに、時間が経つにつれて自分の中にある藤堂の存在が大きくなっているのは、なんとなく気づいていた。  けれどそれがなぜなのかは、いまだによくわからない。時間はまだそんなに経っていないのに、彼のことをもっと知りたいと感じる。どうしてこんなに彼のことが気になってしまうんだろうか。

ともだちにシェアしよう!