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第111話 すれ違い 6-1

 正直、自分でも不思議に思うほど、彼が傍にいないことが物足りないと感じる。 「そんなの知らないわよ」  静かな室内にため息交じりの呆れた声が響く。準備室にやって来た片平に僕が開口一番聞いたのは、藤堂の行方だった。クラスも違って毎日監視しているわけでもないのだから、片平が知っているはずがないことは――。 「わかってるんだけどな」  そう呟いてうな垂れた僕の頭に、バサリと紙の束が乗せられた。 「一日、二日会えなかったくらいで死にそうな顔をしないでよ」 「そんな顔はしてない」  乗せられた束を頭から下ろし、目の前に立つその姿を見上げると、腕組みしながら片平はこちらを見下ろしている。ふいに視線が合えば、情けないと言わんばかりに盛大なため息が吐き出された。なぜこんなに呆れられ、馬鹿みたいに落ち込んでいるのかと言うと。結局あのあと、藤堂に会うことができなかったからだ。  藤堂が着くよりも先に、生徒に声をかけられ急用だと職員室へ引き戻された。そして放課後に藤堂のクラスへ行こうと歩けば、他教科の先生に捕まり仕事を手伝わされた。そして一晩明けた今日も、いや今日は姿さえも見かけることなく放課後を迎えてしまった。やることなすこと空回りばかりで、ここまで会えないと意地でも会いたくなるものだ。

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