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第114話 すれ違い 6-4
なんだか人生の選択を迫られているような気分だ。でも確かに、この選択は自分の人生に大いに関係ある。答え次第では人生を大きく左右しかねない。
「自分の胸に手を当てて考えて見なさいよ」
「う、うーん」
言われるままに考えてみるものの、その答えはそう簡単には見い出せない。
「はあ、歳を取ると頭で恋愛しちゃうってほんとなんだ」
目を細め、片平は遠くを見るような視線で僕を見つめる。そんな哀れな目で見るな、なんだかいたたまれなくて、逃げ出したい気分になるではないか。
「誰かを好きになるのに時間って必要? 一目見ただけで好きになっちゃ駄目? 意識した瞬間、もう好きになっちゃうってないと思う?」
「なんで、片平はそんなに藤堂のことに一生懸命なんだ」
真剣に問いただしてくる片平に思わず眉をひそめる。なんでそこまで一生懸命なのだろう。ふとした疑問――幼馴染みだから?
不思議に思いじっと片平を見ていると、その表情が見る見るうちに呆れ返った険しいものになっていく。
「それ、気づいてない? 西岡先生はずっと私に嫉妬してるの。私が優哉と話してる時はいっつもそうやって嫌そうな顔をしてる」
「僕が?」
「そう、先生が」
予想外の回答に僕は目を丸くしたまま硬直した。
嫉妬?
僕が、片平に?
なぜ?
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