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第116話 すれ違い 7-2

 片平の言うように藤堂が男子といくら仲よくしていようが気にならない。しかし女の子と付き合ったことがあると聞いただけで動揺した。これは自分の感性なのだから仕方ないと言われればその通りだ。なんとなくいままでの違和感がわかる気がする。  でも――。 「いままで相手に対して、そんな風に感じたことがないからよくわからない」 「え?」  戸惑いがちに答えた僕に一瞬目を見開き、なぜか額を押さえて片平はうな垂れた。 「……先生、いままでの彼女ほんとに好きだった?」 「なに言ってるんだよ。そうでなければ付き合わないだろ」 「それなのに嫉妬するようなことなかったの?」  驚かれた意味がわからず訝しげに見れば、ふうと息を吐いて片平は小さく唸る。 「ああうん、そうだよね。先生だもんね。軽い気持ちで付き合うタイプじゃないよね」  乾いた笑い声を上げながらこちらを見る片平の様子に、思わず眉間にしわが寄ってしまう。けれどそんな僕をよそに、ぶつぶつと何事かを呟きため息をつかれた。 「実は恋愛音痴? いや、って言うか、なんでそこまで意識してるのに気づかないかなぁ」 「片平?」 「なんでもない!」 「……」  大きく首を振りながら、誤魔化すように笑われるとその先を追求する気も失せる。諦めたようにため息をつけば、なぜか同じようなため息をつかれた。 「まあ、自覚がないなら自覚させてあげるしかないか」 「ちょっと待て。なんでそんなに強制的なんだ」  さも当然といった口振りで呟く片平にどうしようもなく力が抜けた。いつにもまして今日の片平は強引で、制止をする隙を与えてくれない。

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