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第119話 すれ違い 7-5
「先生は好きだってこと、認めるのが怖いだけでしょ」
「あんまり誘導尋問するな」
突然早くなった鼓動に焦りながら片平に視線を戻すと、大袈裟に肩がすくめられ、今度はそれを大きく落とされた。
「そうでもしないと認めないでしょう。あとから気づいて手遅れになっても知らないから」
「手遅れってなんだ」
怒ったような口振りで話し出す片平に戸惑ってしまう。怒られる理由がわからない。
「万が一、手が届かなくなって、それから気づいたって遅いんだからね。まったく、先生が鈍過ぎてあいつがハゲたらどうするの!」
「はあ? 一体どうしたらそうなるんだ、ってこら片平」
ムッと口を尖らせ、いきなり人の髪を両手でかき回し始めた片平の腕を取れば、さらにムキになりその腕に力を入れてくる。
「ちょ、ほんとに待て」
「認めちゃいなさい」
いくら小柄な片平でも、さすがに体重をかけてのしかかって来られると抗えない。椅子が後退して机にぶつかると逃げ場がなくなった。伸ばされる腕から逃れようと、思わず身体が後ろへ反れる。
勝ち誇った片平の顔に苦笑いしか浮かばない。
「不純異性交遊の現行犯」
「は?」
ガラリという戸が引かれた音と共に、台詞の割にのんびりとした声が響く。その声に僕は慌てて身体を起こした。
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