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第121話 すれ違い 8-2
「そんなに怯えると苛めたくなる」
「黙れ! 万年発情男」
「なんだ、まだ根に持ってるのか。あんなの挨拶程度で、ちょっと口の端にキスをしただけなのに。案外ウブだな」
顔をしかめた片平に満面の笑みを浮かべる峰岸。その姿になぜか深いため息が漏れた。片平の峰岸嫌いの原因はこれか。
峰岸の行動はもはや、セクハラや痴漢行為そのものだが、彼だからこそこの程度の反応で済むのだろう。普通だったらもっとひどくなじられて、訴えられても文句は言えない。いや十分片平の言葉は暴言ではあるが、されたことを思えば当然か。
「峰岸、あんまり女子をからかうな」
学校一の色男は王様気質で頭が痛くなる。
「からかってるんじゃなくて、可愛がってるだけ」
「それじゃ、尚更タチが悪いだろう」
目の前に立った峰岸を見上げれば、飄々とした雰囲気でまるで悪びれた様子はない。
そうだ、峰岸は元々こういう少々タチの悪い生徒なのだ。教師たちも皆、普段から彼に軽くあしらわれ、言いくるめられ、あまり頭が上がらないところがある。しかしこれでいてリーダーシップは強いので、不思議と周りに人は集まる。だがやはり一癖ある性格だ。
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