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第122話 すれ違い 8-3
「で、どうした。珍しくここに来るなんてなにか用か?」
なんの顧問や担当もしていない僕は峰岸にとって、まったくと言っていいほど用がない人間のはずだ。
「ああ、そうだ部長会議が始まってるぜ、片平部長さん」
「えっ、あ、ヤバい」
峰岸の言葉で腕時計に視線を落とした片平は、慌てて戸口に駆け出した。しかしふいに立ち止まってこちらを振り返る。複雑そうなその面持ちに首を傾げれば、さらにくしゃりと顔が歪んだ。
「西岡先生に変なことしたら許さないからね」
「おい、変なことってなんだ」
峰岸を睨みつけ、ぴしゃりと戸を閉めてしまった片平に僕は思わず眉をひそめてしまった。それにしても相変わらず台風のような去り際だ。しんとした室内に僕のため息だけが残される。片平の言葉にひどく嫌な予感がしたが、とりあえず目の前に立つ峰岸を見上げた。
「……で、僕への用事は?」
様子を窺いながら首を傾げれば、こちらを見ていた峰岸がふっと口の端を緩めて笑う。
「創立祭の顧問をしてくれないか」
「顧問?」
ひらりと目の前に差し出された紙と峰岸を見ながら、僕は首を捻る。それは顧問引き継ぎの書面だった。
「生徒会主催は生徒会顧問が見るんじゃないのか」
「あの人このあいだ、事故っただろ」
「あ、ああ」
峰岸の言葉にふと思い出す。そういえば、いまの生徒会顧問の先生は酔っ払って階段からダイブして――全治三週間だ。
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