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第127話 すれ違い 9-3
のしかかるように体重をかけられると、椅子や机がぎしりと悲鳴を上げ、無意識に肩がびくりと跳ね上がる。
「こんなに可愛いって知ってたらもっと早く喰ってたのに」
意味がわからない、全然わからない。なんでそういう結論が導き出されるのか。
「や、やめろ。やだって」
髪を撫でられその指が顔の輪郭をたどれば、どうしようもないほど身体が冷えていく。
「触るな」
「藤堂じゃないとやだ?」
「だからなんでそこで藤堂が出てくるんだ」
「なんでだろうな」
そう言って口元を緩める峰岸が本気でないことはわかっている。本気を出されたら間違いなく騒ぐ隙もない。けれどふざけているだけだとわかっていても、膨れ上がる嫌悪感で気が遠くなりそうだ。
「もっと面白味がない奴かと思ってたのに、予想外で惚れそう」
「は? なに言って」
あ然とした顔で峰岸の顔を見返すと、目を細められにやりと笑われた。企みを含んだようなその視線が正直言って怖いとさえ感じる。
「そうだセンセ、さっきのもう一回言ってみて」
「な、なにをだ?」
峰岸の言っていることがわからず眉を寄せれば、急にふっと唇が歪み、笑いを堪えるように結ばれる。そしてそれをゆっくりと峰岸は僕の耳元へ寄せた。
「やだ、ってもう一回言って」
耳に息を吹きかけるように囁かれると、途端に恥ずかしさが増し自分でもわかるほど顔が紅潮する。
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