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第130話 すれ違い 10-1

 三島も峰岸もお互いを見ながら微動だにしない。いきなり緊迫した空気について行けず呆けていれば、峰岸がため息交じりに打たれた頬をさする。 「遠慮ねぇな」  ぽつりと呟き峰岸が小さく笑うと、三島は顔をしかめ息をつく。 「あっちゃんの時もそうだったけど、他人を巻き込むなよ。優哉に構って欲しければ本人に言えばいい」  勢いよく三島に襟首を掴まれた峰岸は、不機嫌そうに目を細め小さく舌打ちをする。 「別に、ここにはちょっと用があって来ただけで。センセがあんまりにも無防備だったから、ついからかいたくなっただけだ。まさか泣くとは思わなかったけどな」 「なっ、泣かせるようなことして開き直るなよ!」  珍しく声を荒らげる三島の雰囲気に苛立ちが含まれ、わずかに視線が鋭くなる。けれどそんな三島の剣幕にも面倒くさそうに髪をかき上げ、峰岸は襟首を掴んでいた手を払い除ける。そして名前を呼ぶ三島を振り返ることなく、その横をゆっくりと通り過ぎて行く。  足音が遠ざかり、開け放たれていた戸が閉まると、三島はなぜか弾かれたように僕へ駆け寄ってきた。 「西やん大丈夫?」 「え? ああ、大丈夫だ」  心配げに覗き込んでくる三島の視線に戸惑いながら、すっかり腰かけてしまっていた机から下りようとした。途端――。

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