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第139話 想い 1-4
「それは、まあ」
急にしょぼんとうな垂れた姿に苦笑してしまった。二十代半ばにもなるいい大人がなんとも情けない顔をする。それだけ相手に本気とも取れるけれど。
「年上ってやっぱり気難しいのかなぁ。うちはそんなに離れてないけど、男としてのプライドなのか気を使い過ぎたり、優しくし過ぎたりしても怒るんだ」
「元々ノンケの瑛治さんには難問だな」
「え! やっぱりそういうのって関係あるの?」
「うーん、感覚の違いかもしれないですね。対等でありたいんじゃないですか」
本人的にはこっそりと恋人との時間を共有しているつもりでいるようだが、この職場で彼に恋人がいることを知っているのは八割だろう。
そんな彼にいつの間にか恋愛相談を持ちかけられるようになった。相手は大学時代の先輩で、しかも男だと聞いた時は驚いた。さらに驚いたのは相手の家に押しかけて、強硬手段で居ついてしまっているという現状。俺も元々瑛治さんに付き合っている人がいるのは噂で知っていたので、真実を聞くまでは人当たりもよく優しい彼には、普通に可愛らしい彼女がいるのだろうと思っていた。
いまでこそこちらの性癖も知る彼だが、相談された当初はよくそんな話をしようという気になったものだと思った。口が堅そうだからと言う理由だったが、元が元だけに怖いもの知らずなのかもしれない。けれどあまりにも潔いその態度は少し羨ましくもある。俺には到底真似できないまっすぐさだ。
「まあ、瑛治さん優しいところは長所だとは思いますけど」
「でも優し過ぎると駄目なんだよね。難しい、わかんない!」
がっくりとうな垂れた姿につい笑ってしまった。
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