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第141話 想い 2-1

 更衣室を飛び出し外へ出ると、すぐさま携帯電話を開いた。耳元で鳴るコール音がもどかしく、その音が響くたび、早く出てくれと思わずにいられない。 「もしもし」  数回コールしたあと、ふいに音が途切れのんびりとした声が聞こえた。  話をしていないのはたかだか二日ほどだと言うのに、この声を最後に聞いたのが随分と遠い日のことのように思える。こんなにも彼に飢えていたのかと思うと、自分が情けなく感じた。 「先生、いまどこですか」 「もしかして走ってるのか?」  せっかく繋がったと言うのに、聞きたいこととは違う答えが返ってきて苛立ってしまう。思わず舌打ちしそうになったのを抑え、大きく息を吐き出した。気が急いている時ほど自分の内側にある本性が顔を出しそうになる。けれどそれは彼の前では押しとどめておきたい。そうでなければ、いつかどこかで彼を傷つけてしまいそうで怖いからだ。 「どこですか」 「あ、来た」 「は?」  わけがわからず首を捻るとほんの少し先から、耳元で聞こえる声と同じ声がした。よくよく目を凝らして見れば、薄暗い道の端でガードレールに腰かける人影を見つける。 「先生!」  慌てて駆け寄れば、久しぶりとなに気ない様子で片手を上げられた。目の前に立てば小さく首を傾げられ、どうしようもないほどめまいがした。あまりにもなにごともなかったような素振りで、普通過ぎて、逆にどう接していいのか迷ってしまう。 「大丈夫か?」 「大丈夫じゃないです」  彼の問いかけに思わず本音が漏れてしまった。ふいに力が抜けて両膝に手を当てると、少し戸惑ったような気配を感じる。 「悪い」  しまった――彼の不安を煽ったかもしれない。

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