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第144話 想い 2-4

 可愛い可愛いと普段から口にするが、決して彼に男らしさがないわけではない。けれどいまはそれさえなりをひそめてしまい、戸惑わずにいられない。しかし素肌に触れただけで顔を赤らめうろたえるだなんて、こんな反応を見せられると、相手として意識されているのかと思わず期待してしまいそうになる。 「先生、今日はどうしたんですか」  身なりを整えてから改めて彼に向き直ると、彼はそわそわとして落ち着かない様子だ。 「藤堂、あっ、あのな」  俯きがちな顔を再び覗き込んで、離れた身体を引き寄せようとすれば、焦ったように腕を掴まれた。その慌てように思わず固まってしまう。 「……」  この状況でまさか手酷く拒絶されるようなことはないだろうとは思う。そう思うが、胸がざわりとして痛い。世界中の誰に拒絶されても構わないが、この人にそうされたら、俺は本当に息の根が止まってしまいそうなくらいだ。そのくらいに好きで愛おしくて仕方ないと思っている。 「そ、そんな顔はするな。違う、違うから」  嫌じゃない、そう消え入りそうな声で言われ不覚にも泣きそうになった。嫌われていないという言葉だけでひどく安堵して、身体中の息を吐き出し、祈るかのように組んだ両手を額に当てて俯いた。 「す、好きだ」 「え?」  ぎゅっと袖口を握りしめられ、顔を真っ赤にして俯くその姿に思わず俺は首を傾げてしまった。 「いま、なんて?」 「だ、だから」  脳がうまく働いていない気がした。慌てふためいている彼の声が少し遠い。まさかそんなことがあるはずはないと思ってしまった自分がいる。彼の口からそんな言葉が紡ぎだされる日が来るなんて、想像もしていなかった。 「お前が好きだ」  今度はあ然としている俺の目を見ながら、まっすぐにそう告げられた。

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