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第146話 想い 3-2

 その横顔を見ると、どれだけ自分のことを想っていてくれたんだろうかと、胸が少し痛む。 「人の告白を勝手に夢オチにするなよ」  切なさが伝染したような気分になり、ブレザーの裾を指先で引けば、すみませんと藤堂は小さく謝る。けれどその表情はいまだあまり晴れない。 「迷惑か?」  浮かない態度を見せる藤堂に胸が痛む。戸惑っているからだろうが、喜んでくれているようには見えなくて、ズキズキとさらに胸が痛み出した。藤堂が見せるその顔はあまり好きじゃない。  すれ違ってしまったあの時のことを思い出して、後ろ姿が頭の片隅をよぎる。手を離されてしまったらどうしようかと、泣きそうな気分になってくる。 「そんなわけないでしょう」 「だったらなんでそんな顔をしてるんだよ」  いまにも泣き出しそうな僕の気配を感じたのか、藤堂は慌てたように顔を上げた。そんな藤堂をじっと見ればまたゆるりと眉が寄せられる。その表情に思わずため息が漏れてしまった。どうしてそんな顔ばかりするんだろう。 「すみません。ほんとに、なんかもう、頭が真っ白で」  珍しく落ち着きなく視線をさ迷わせ、うろたえる藤堂に肩をすくめると、ますます困惑した顔になる。いまは急いても仕方ないのかもしれない。こんなに急な展開が起きたら、きっと僕でもついていけないと思う。いや、急な展開についていけなくて、頭の中がめちゃくちゃになって、どうしたらいいのかわからなくなるくらいになったのは、僕のほうが先だ。  そう考えたらなんだか少しおかしくなってしまった。 「藤堂は意外とこういうの弱いんだな」 「こんなことは先生だけです」  首を傾げて小さく笑って見せると、ふいに藤堂の頬に赤みがさす。どこか困ったように笑うその顔に胸が少し高鳴った。 「藤堂はやっぱり笑ってるほうが好きだな」  どんな時でも藤堂が笑ってくれると幸せな気分になる。胸がドキドキしたり、そわそわ落ち着かなくなったりすることばかりだけれど、それでも彼が笑うと僕も嬉しいと思えるのだ。ずっと見たかった彼の笑みに、僕は誘われるままに腕を伸ばした。

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