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第160話 想い 6-4
「食べ物はいいんだ。元々これがメインみたいなもんだし、創立祭は大人のお祭りだからこれくらい大したことない」
「そんなもんか?」
なんだか数字の桁が一つ多い気がする。峰岸が大丈夫だと言うのだから問題ないのかもしれないけれど、やはり少し心配になる額だ。
「そんなもんだぜ。どうせ来るのは学校関係者や一部の父兄だからな」
ひらりと書面を机に戻した峰岸は、いまだ首を捻る僕の肩に手を置き、体重をかけて背中にのしかかる。
「重い! 潰れる」
「センセが細過ぎなんだよ。見ろよこの手首、女子より細いだろ」
むんずと人の手首を掴んでそれを自分の指で測るように親指と人差し指で輪を作る。すっぽりとそこに収まってしまうことにかなりショックを受けたが、体質的に骨が細いのは元より承知なので、峰岸を睨み上げるだけに留めた。それに峰岸の手が大きいだけだ。
「大体そう思う前に自分の大きさ考えろ!」
「うーん、細いけど、抱き心地は悪くない」
軽い調子で笑う峰岸の頭を後ろ手で叩くが、離れるどころか逆に腕が首に巻きついた。
「ニッシー逃げて!」
「お前もそう言うならなんとかしろよ」
いまだ机の下に身を隠している神楽坂は僕の言葉に、無理無理と大きく首を左右に振って後ろへ下がって行く。
「深い理由があるって言ったでしょ。藤堂が帰ってくるまで待って」
「……そういや藤堂は?」
神楽坂の言葉に僕は首を傾げ峰岸を見上げた。
「職員室。用事が済んだら戻って来る」
「そうか」
ここへ来てから藤堂の姿がないことは気になっていたが、戻って来るということは、最初はいたのか。
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