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第161話 想い 6-5
「それよりセンセ、飯は食わないのか?」
「あ、忘れてた」
書類よりもさらに端へ寄せられた弁当を峰岸が指差す。その存在をすっかり忘れていた僕は、冷めた弁当を見下ろした。
「腹は減ってない? 無理して食わなくていいけど、一応これ今回使う料理の一部だから」
「いや、忘れてただけ」
「だからか」
小さく独り言のように呟きながら、峰岸は僕の目の前にある書類を避け、代わりに弁当を引き寄せた。
「だからこんなに痩せてんだ」
「うるさいな。そこまで痩せてない」
眉を寄せた僕に小さく笑い、峰岸は二人羽織りの如く背後から勝手に割り箸を割り、弁当の蓋を開ける。その行動に目を細めて見上げれば、いきなり口元に箸を近づけられた。
「センセ、あーん」
「じゃないだろ」
箸を持っていないほうの腕を叩くと、峰岸はほんの少し口を尖らせる。
「お前ほんとに行動が読めない」
「そう?」
ため息を吐く僕を尻目に、峰岸は箸先で摘んだから揚げを自分の口に放り込む。行動が読めないのはなにも考えていないからなのか。いや、峰岸に限ってなにも考えずに行動するタイプとは思えない。やはり峰岸はわかりにくい男だ。
「なにをしてるんだお前」
「ん、ああ、帰ってきたのか」
「え?」
顔を上げた峰岸の視線を追えば、藤堂がゆっくりとこちらへ向かい歩いてくる。そしてその姿を見ただけで、僕は自分でもわかるくらい頬が緩んだ。けれど藤堂が入って来た途端、そわそわしだす周りの雰囲気に僕は眉をひそめた。
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