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第162話 想い 7-1

 藤堂が女子に人気があるのは知っているが、なんとなくそれとも違うような雰囲気。彼女たちの視線は藤堂だけではなく、峰岸にも注がれているような気がする。 「どうしたんですか?」  僕の背に貼りついた峰岸を引き剥がして放りながら、藤堂は首を傾げる。そして僕は周りの空気と片寄った人口の意味になんとなく気がついてしまった。 「ん、いや。なにも聞かなかったことにする」  遠くで黄色い悲鳴が聞こえたけど気にしないことにする。 「藤堂っ、やっと帰って来てくれた」 「ちゃんと見ておいてくれって言っただろ」  藤堂の姿を見た途端、神楽坂はすかさず立ち上がる。しかし両腕を広げ走り寄ってきた神楽坂の頭を片手で押さえそれを遮ると、藤堂はあからさまに顔をしかめた。 「ちゃんと見てたんだって、でもこれ以上は無理無理」 「ほんとに見てただけだろ」 「なんの話?」  二人の会話に僕が首を傾げると、藤堂は曖昧な笑みを浮かべながら振り向いた。 「いえ、なんでもないです」  椅子を引いて僕の横に腰かけた藤堂を見つめれば、ますます困った顔で笑われる。どうやら僕の問いかけに答えるつもりはないようだ。 「別にわざわざ先生に言うようなことじゃないですよ」 「ふぅん」  藤堂の答えに少し不満をあらわにした声が出てしまう。胸の辺りでモヤモヤするこの気持ちは軽い疎外感だろうか、実に不愉快だ。 「ただ藤堂は、会長がニッシーに変なことしないように見ておいてくれって言っただけ」 「は?」  先ほどまでのように机の端から顔を出していた神楽坂はしれっとした表情でそう呟く。けれどその声に慌てた素振りを見せ、藤堂は肩を落とし額を押さえた。

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