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第163話 想い 7-2

「余計なことは言うな」  うな垂れて下を向く藤堂の耳が少し赤い。それに気がつき僕は大きく目を瞬かせてしまう。今朝も言われたアレか、すっかりそんなこと忘れていた。というよりもこんな人のたくさんいる場所で、なにかがあるなんて考えも及ばなかった。 「心配かけたのか、悪い」 「いえ、先生がそういうことに疎いのは知ってますから」  微かに息を吐き机に頬杖を突いた藤堂は、眉尻を下げて苦笑いを浮かべた。普段でも十分過ぎるほど心配性なのに、余計な心配をかけてしまって申し訳ない気分になる。 「人を害虫みたいに扱うなよ」 「間違いなく害虫だろ」  藤堂は不機嫌そうな声でそう言うと、僕の隣に立って肩に腕を回そうとした峰岸の手を払う。  やはり二人揃うとすぐこうなるのか。どこか居心地の悪い雰囲気に肩をすくめると、視界の隅で神楽坂も同じように苦笑いを浮かべて肩をすくめた。 「なんでお前たちはすぐ喧嘩になるかな」 「喧嘩してるつもりはないですけど」 「ちょっとからかってるだけだろ」  峰岸の言葉でまたピクリと藤堂のこめかみが震える。やはり原因はこの峰岸の発言と行動だろう。なぜここまで執拗に藤堂の神経を逆撫でするのかがわからない。やはりその反応が楽しくて仕方がないのだろうか。

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