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第166話 想い 8-1
放課後になってから仕上がって来たパンフレットや、招待状の発送チェックを手伝っていたら、すっかり時間が遅くなってしまった。
「思ったより時間がかかったな」
気づけば校舎内は薄暗く、残っている生徒たちも少ないのか、運動部が使用しているグラウンドや体育館から時折喧騒が聞こえるくらいだ。
峰岸やほかの生徒会役員にその場は任せ、慌てて会議室を飛び出して来たが――。
「もう十八時か」
廊下の窓から見えた時計に眉をひそめると、僕はさらに歩く足を速める。だいぶ待たせてしまったけれど、藤堂はまだいるだろうか。
「藤堂?」
明かりのついていない準備室の戸を恐る恐る開く。中を覗けば室内は静まり返り物音一つしない。しかし窓際の机に足を向けてみれば、僕が普段腰かけている椅子に藤堂は座っていた。
「もしかして寝てる?」
微動だにしない藤堂に近寄ると、机に身体を伏せ腕枕をしながら目を閉じている。近づいても起きる気配がないということは、だいぶ眠りが深い。
「そういや、夜眠れないとか言ってたのよくなったのか?」
しばらく黙ったまま藤堂を見下ろしていたら、ふいに安眠と言うにはほど遠いしわが眉間に刻まれた。なぜかその表情を見ているとたまらなく不安になる。
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