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第167話 想い 8-2
「なんの夢見てるんだ」
僕はそろりと手を伸ばし、起こしてしまわないようそっと髪を撫でる。すると次第に藤堂の表情が和らぎ、僕はほっと胸を撫で下ろした。
「そういや、お前のこと全然知らない」
藤堂を意識し始めて、まだそれほど時間が経っていないのだから、仕方がないと言ってしまえばその通りだ。けどそれは少し寂しい。
眠れないほど悩んでいるその理由も、藤堂はなにが好きでなにが嫌いでどんな未来を描いているのか。ほんの少しだけでもいいから、藤堂のこともっとちゃんと知りたい。
「いっつも僕のことばかりだしな、藤堂は」
好きだと思ったら相手のことが知りたくなった、藤堂がそう言っていたことがいまになってわかる。相手のことが好きであればあるほど、近づきたくなってなんでも知りたくなるんだ。
「こういうのって初めてかもな、なんかいままでと違う」
いままで誰かを好きになったことがないわけじゃない。確かに嫉妬するようなことはなかったけれど、それでも彼女たちのことは、別れた時に悲しくなるくらいは好きだった。でも――いまはそれよりもっと想いが深い気がする。
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