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第168話 想い 8-3

「こんなに傍にいないのが落ち着かなかったり、気持ちが見えなかったりするのがたまらなく不安なのは初めてだ」  だからもっと知りたい、触れたいと思う。些細なことでもどんな小さなものでも、藤堂に関することならなんでも見たいし知りたい。 「もっとたくさん話がしたい。お前のことを知りたいよ」  二人きりで長く一緒にいたのも、藤堂を近くに感じられたのも、初めて二人で出かけたあの日だけだ。あの時はあまりにもショックで、一緒に出かけなければよかったなんてそう思ってしまったけれど、やはりあの時が一番藤堂に近づいた気がする。 「もう一度」 「どこか二人で行きませんか」 「えっ」  突然聞こえたその声に身体が跳ねた。そして身体を伏せたままの藤堂を覗き込めば、バチリと目が合い、さらに肩が跳ね上がる。 「起きてたのか!」  目を細めて笑う藤堂から慌てて離れると、彼はゆるりと身体を持ち上げた。  いつから起きていたのか知らないが、間違いなく恥ずかし過ぎる独り言は聞かれていただろう。茹で上げられたように顔が熱くて、火が出そうだ。 「せっかく佐樹さんが触ってくれてるのに、もったいなくて起きられません」  なに食わぬ顔でそんなことを口にする藤堂は、うろたえて視線をさまよわせる僕の頬を指先で撫でる。

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