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第169話 想い 8-4
「真っ赤で可愛い」
「うるさい! 変なこと言う……」
「どうしました?」
ふいに言葉を途切れさせ、目を見開く僕に藤堂は不思議そうに首を傾げた。
「いや、悪い……眼鏡」
「ああ」
僕の言葉にやっと合点がいったのか、藤堂は机の上に手を伸ばしてなにかを掴む。カチャリと音を立てたそれは、普段藤堂がかけている銀フレームの眼鏡だ。
「伊達じゃないよな?」
「まあ、それなりに度は入ってますよ」
手にした眼鏡を藤堂は僕の目の前にかざして見せる。ほんの少しレンズの先が歪んで見え、わずかながらに度が入っているのがわかった。
「どうしたの佐樹さん」
僕をじっと見つめ、急にふっと笑みを浮かべた藤堂。その表情にぼんやりしていた僕は我に返った。
「あ、いや、その」
自分でもわかるくらいに顔が紅潮する。たかだかレンズ一枚、隔てるものがなくなっただけで、その目に映るものがはっきりと見えて、恥ずかしくなってきた。
綺麗な黒目に映る自分の姿は羞恥以外のなにものでもない。
「コンタクトにしたりしないのか」
その場を誤魔化すように眼鏡を指差すと、藤堂は少し眉をよせて息を吐く。
「ああ、ケアが面倒だし。余計な出費ですから」
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