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第211話 休息 10-2

「なあ明良、藤堂となにを話してたんだ」  藤堂から聞きだすことを諦めて、仕方なしに僕は明良の元へ向かった。ビールを片手にリビングのソファでテレビを見ている明良は僕の声に振り返る。けれどしばらくこちらを見ていた視線は、問いかけには応えずまた前を向いてしまう。傍まで行って隣に腰かけると、少し呆れたような視線を向けられてしまった。 「ああ、だから……昔話だって」  何度目だよという呟きが聞こえるが、僕は再び前を向こうとする明良の背中を掴む。どうして明良まで曖昧に濁すんだろう。 「誰の昔話だ」  リビングに戻ったあと、藤堂と明良はやけに親しげな様子だった。不思議に思い二人に理由を聞いたら、実は以前からの顔見知りだったと言われた。しかしそれにしたってなにを話したらあんなになるのか。  確かにいまは普段となんら変わらない。けれど僕を見た瞬間、藤堂の目が大きく揺れたのを見逃さなかった。 「だから、本人に聞け。そこは俺が言う話じゃない」  そう言って缶の底で僕の額を小突くと、明良は再びテレビ画面に向き直る。どうしても話してはくれないようだ。 「佐樹はほんと優哉くんのことしか頭にないわね。寂しいでしょ」  向かい側のソファに座っている佳奈姉が、ビールをあおる明良に目を細め楽しげに笑う。 「もう俺のことなんか眼中ないんだぜ。男の友情なんて儚いよなぁ」 「別に、そんなんじゃない」  佳奈姉の言葉に笑って肩をすくめた明良に、思わず眉をひそめてしまう。でも僕の顔を見て苦笑いした明良はなにも言わず、なだめすかすように頭を撫でる。

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