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第215話 休息 11-2

 慌ただしい物音に気がついたのか、藤堂はゆっくりと振り返る。いつものように笑うその姿にとりあえずほっと息を吐く。 「おう佐樹、こいつかなり強ぇぞ」 「なにが強いだ馬鹿明良。未成年だ!」  大きく手を振ってこちらを手招く明良に歩み寄ると、僕は容赦なく頭を叩いた。母や佳奈姉にはまだ藤堂の歳は言っていないが、元々知り合いであった明良が知らないわけがない。 「ああ、そういやそうだったなぁ……でも、まあ気にするな」 「気にするだろう普通!」  昔からこういうところが大雑把なのが明良だから、もっと気をつけておくんだった。 「だってこいつ」 「佐樹さん! お姉さんが」 「ん?」  なにかを言いかけた明良の声を、藤堂が慌てたように遮った。その反応にいささか疑問を持ちながらも、やけに大人しい佳奈姉に視線を向ける。 「ああ、ほらまた寝た。明良、責任持って部屋に連れて行けよ」  テーブルに突っ伏している佳奈姉に思わず深いため息が出る。明良と飲むと毎回このパターンだ。もう見慣れ過ぎた光景に言葉もない。 「藤堂、二人のことなんか気にしなくていいからな」 「え? 大丈夫なんですか?」 「どっちかが潰れるまで飲まないと気が済まないんだよ」  心配げな藤堂に肩をすくめて僕は明良と佳奈姉を見比べる。あれだけあったビールはどこへ消えたのか。冷蔵庫の外にあったそれはもう見当たらない。

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