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第221話 休息 12-4

「酷いな。あんまり馬鹿って連呼しないでください。俺も不安にさせること多いですから、お互い様ですよね。疑ってすみません」  小さく口を尖らせる彼に腕を伸ばし抱き寄せた。するとそれと共に彼の温かな両手が、俺の頬を包み込む。 「泣きたくなったら泣いてもいいんだぞ。嫌だったら嫌って言え」 「……そうやって、俺を甘やかさないでください。つけ上がりますから」 「甘やかしたいんだよ。藤堂はもっと素直になったほうがいい」 「俺はこの先、あなたといられるならそれだけでいいです」  これは嘘なんかじゃない。嫉妬も不安もきっと一生尽きないが、それでも傍にいられると言うなら、そんな想いは飲み下してしまってもいい。本当にずっと傍にいられるなら、俺はそれ以上を望んだりしない。 「傍にいるだけなんて却下」 「え?」  急に不機嫌な顔する彼に俺は思わず目を瞬かせてしまった。 「全部、藤堂の全部がないと嫌だ。本当は誰かに笑いかけるのも話しかけるのも、誰かがお前を振り返るのだって嫌なんだからな。自分でも頭悪いんじゃないかって思うくらい、こっちは欲が深いんだよ!」  巻くし立てるように早口で話す彼にあ然としていると、頬に触れていた手が俺の背中へと回る。そして自分の発言に照れくさくなったのか、彼は俺の肩に額を押し当て急に黙り込んでしまった。 「可愛い」 「うるさい!」 「え……さ、佐樹さん?」  俺の呟きに不機嫌そうな視線が持ち上がる。突然顔を上げた彼の頭を避けて重心が後ろへ下がるが、強引に顔を引き寄せられて、身体が前へ不自然に傾いた。  戸惑っている俺などお構いなしに重ねられた唇の感触が、あまりにも優しくて思わず目を見開いた。 「絶対、誰にも渡す気ないからな」  いつもはぼんやりしていてひどく危なっかしい人なのに、急にこうしてまっすぐとした強い眼差しに変わる。そんな彼には一生適わない気がした。

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